ヴィタリック氏ら、イーサリアムの取引ガス上限1677万を提案

イーサリアム（ETH）のヴィタリック・ブテリン共同創設者とトニ・ヴァールシュテッター研究者は6日、新たなイーサリアム改善提案（EIP-7983）を共同で 提案した 。

この提案は、取引ごとに1677万のガス上限を導入するものだ。

提案の目的は、現在のアーキテクチャに内在するセキュリティとパフォーマンスの課題に対処することにある。

現状では、単一の取引がブロック全体のガスリミットを独占する可能性があり、ネットワークに深刻な影響を及ぼす脆弱性が指摘されていた。

セキュリティとネットワーク安定性の向上

今回のEIP-7983は、単一の取引がブロックの全ガスを消費することで引き起こされるDoS攻撃のリスクを軽減することを主眼に置いている。

悪意のある攻撃者がネットワークを過負荷状態にし、通常の活動を妨害するのを防ぐ狙いだ。

また、ガス消費量の大きい取引がブロックを占有すると、他の小規模な取引が処理されにくくなり、手数料の予測が困難になる問題があった。

取引ごとに上限を設けることで、ガス使用量をより均等に分散させ、ブロック検証の円滑化とボトルネックの解消が期待される。

この改善は、 イーサリアム のネットワーク全体をより安定させるための重要な施策と言える。

この上限はブロック検証時に適用され、上限を超えた取引は拒否される。

なお、ブロック全体のガス上限は、既存のコンセンサスルールに基づき、マイナーやバリデーターが引き続き調整する仕組みとなっている。

技術的背景と将来への影響

この1677万という数値は、以前EIP-7825で提案された3000万という上限を見直し、コミュニティからのフィードバックを反映した結果だ。

取引の複雑性とネットワーク性能のバランスを取るため、より厳格な制限が選択された。

この変更は、スケーラビリティとプライバシー向上のために注目されるゼロ知識仮想マシンとの互換性を高める効果もある。

複雑な取引をより小さな単位に分割することが推奨されるためだ。

これは、イーサリアムが単なる アルトコイン に留まらず、分散型アプリケーションの基盤として進化し続けるための重要なステップだ。

この上限は過去の取引には適用されず、既存の取引のほとんどは既にこの閾値を下回っているため、開発者や利用者への影響は最小限に抑えられる見込みだ。

現在のガス価格で換算すると、上限まで使用した取引のコストは約11.38ドルとなり、コストの予測可能性を高めることにもつながる。

このようなアーキテクチャの変更は、スマートコントラクト機能を持たない ビットコイン（BTC） との差別化をより明確にするものだ。

また、 イーサリアムとビットコインの違い を理解する上で重要なポイントとなる。