楽天グループは8月から、7000億規模のパラメータを持つ大規模生成AI基盤モデルの開発に着手する。経済産業省が国産AI技術の競争力強化を目的に、同社の開発計画を支援する方針を固めた。実現すれば国内最大級の生成AIとなる。
楽天が大規模モデル開発に踏み切る背景には、20億人以上の利用者を抱える「楽天経済圏」の存在がある。ネット通販の楽天市場をはじめ、通信、金融サービスで蓄積した膨大なデータを活用し、ユーザー個人に最適化されたAIエージェントの構築を目指す。
同社は昨年、15億パラメータのコンパクトな基盤モデルを公開している。今回の大規模化により、より高度なサービス提供が可能になるとみられる。パラメータ数はAIの処理能力を示す指標で、数値が大きいほど高性能な生成AIを実現できる。
米国では大手IT企業が数千億規模のパラメータを持つ生成AIの開発を進めている。一方、国内ではコスト面を考慮した小型モデルによる特化型開発が主流だった。楽天の取り組みは、国産技術による大規模AI開発の先駆けとなる可能性がある。
経産省は「GENIAC」プロジェクトを通じて国産生成AI開発を後押ししている。楽天の計画を生成AIの社会実装加速につながると評価し、支援対象に選定した。
支援対象は楽天のほか、野村総合研究所、リコー、医療・建築系スタートアップなど計24社。2023年度補正予算で確保した290億円から各社の支援額を決定する予定だ。